愛国者or非国民

臨時召集令状


『<召集令状>生徒に配り、「非国民」批判も 福岡の中学教師』(毎日新聞)

『中学授業で「召集令状」、不戦の生徒に「非国民」』(読売新聞)

『授業で「赤紙」配布 戦争拒んだ生徒に「非国民」 福岡』(朝日新聞)

上の3つの記事を読み比べてもらえれば分かるのですが、毎日新聞が一番学校側に対して批判的な論調だと思います。
下に、毎日新聞の記事と、比較的穏やかな?論調の朝日新聞の記事を引用させてもらいます。

毎日新聞より引用)

福岡県志免町の町立志免中学校(結城慎一郎校長)で社会科の男性教諭(48)が、授業で「臨時召集令状」を全2年生218人に配って戦争参加の意思を聞き、「いかない」と回答した女子生徒に「非国民」と書いて返却していたことが分かった。結城校長は「戦争の悲惨さなどを教えるためで、問題はない」と話している。
 町教委の説明によると教諭は10月27、31日に「第二次世界大戦とアジア」の授業をした。教諭は副教材に掲載されている「臨時召集令状」をコピーし、裏面に戦争に「いく」「いかない」の、どちらかを丸で囲ませ、その理由を記入させた。
 「いく」「いかない」の意思表示をしたのは208人で白紙が10人。「いく」理由は「当時としては仕方がない」「家族を守るため」など。「いかない」は「家の事情」「今はいきたくない」などだった。
 「いかない」と回答した女子生徒の一人が、理由に「戦いたくないし死にたくないから。あと人を殺したくないから」と書いた。これに対し、教諭は赤ボールペンで「×」印を付け「非国民」と書き入れて返した。
 女子生徒はショックを受け事情を知った女子生徒の保護者らは「社会科の教諭を代えてほしい」と話しているという。
 町教委は、非国民と書いたことについて「確認できず分からない」という。そのうえで授業の狙いを(1)召集令状の持つ意味を理解させる(2)生徒の歴史認識を把握する――としており「決して思想信条を調べるものではない」と説明している。


朝日新聞より引用)

福岡県志免町の町立志免中学校(結城慎一郎校長)で10月、社会科の男性教諭(48)が授業で2年生全員に「臨時召集令状」を配り、戦争に行くか行かないかを選択させ、行かないと回答した生徒に「非国民」などと書いて返却していたことが分かった。教諭は用紙を返却する際に「コメントは当時の大多数の日本人を代弁して書いた」と説明したといい、「紙切れ1枚で戦争に駆り出された悲惨さを感じてほしいと思った。戦争を美化しようということではない」と話している。学校や町は「授業に問題はなかった」としている。
 町によると、教諭は10月27日と31日にあった「第2次世界大戦とアジア」の授業で、2年の6クラス218人に副教材からコピーした「臨時召集令状」を配った。裏は「私は、このたび召集令状赤紙)を受け取りましたが、戦争に(いく・いかない)意思表示をします」との文章を印刷、行くか行かないかを選択させ、理由も書かせた。
 教諭は後日、コメントを付けて用紙を返却。「いく」と答えた生徒には「当時はそう考えた人が大多数だった」、「いかない」には「個人的な事情で断るのは非国民」などと記した
 生徒が保護者に「非国民」の意味を聞いたことなどから発覚。ショックを受けている生徒もいるという。
 学校によると、教諭は人権学習に熱心という。「傷ついた生徒がいればケアをしたい」としている。
 臨時召集令状は、太平洋戦争で旧日本軍が国民に徴兵を通知した文書で、赤紙とも呼ばれた。

この先生が実際にどういう授業を行ったかは、この記事から分からないですが、「紙切れ1枚で戦争に駆り出された悲惨さを感じてほしいと思った。戦争を美化しようということではない」という気持ちだったというのは、きっとそうだろうと思います。
というか、むしろどちらかといえば「戦争には反対」というタイプの先生のように、私には思えます。(あくまで想像ですが)
戦時中、戦争に反対する人は「非国民」というレッテルを貼られたのも事実ですから、そういうことも含めて、この先生は「戦争の悲惨さ」を子供達に伝えたいと思ったのではないかと、善意に解釈してもよいのではとも思います。
そして、保護者側も「非国民」という言葉に過剰反応するだけでなく、学校の授業を引き継いで、子供と一緒に「戦争」とか「国家」とか「国民の義務」とかについて、子供と語り合うチャンスくらいに考えても良いのではないかとも思いました。

ただ、ここで私が気になったのは、この先生の授業を巡る事件そのものではなくて、その事件を伝える新聞記事の方なのです。
同じ事件を報道するにしても、情報の取捨選択、並べ方、等々によって、読み手が受ける印象が大きく違うということです。
実際、この先生に対する印象は、毎日新聞の記事を読んだ後には、「右寄りな先生」となり、朝日新聞の記事を読んだ後には、「左寄りな先生」となるような気がします。(極端な言い方をすればですけど)
そして、この記事だけに限っていえば、毎日新聞は「左よりな新聞」、朝日新聞は「右よりな新聞」といえるかもしれません。(笑)

まあ、右や左というのも、愛国者や非国民というのと同じで、単なるレッテル貼りに過ぎないので、あまり意味のないことですが・・・。