中国様の「重要講話」を楽しみにしていたのですが・・・

『「首相参拝やめれば会談」 中国主席、関係改善には意欲』(朝日新聞)

中国の胡錦涛(フー・チンタオ)国家主席は31日、北京の人民大会堂橋本龍太郎元首相を団長とする日中友好7団体の代表団と約1時間半にわたり会談した。胡主席日中関係の改善に強い意欲を示す一方、昨年4月以来開かれていない首脳会談について「日本の指導者がA級戦犯をまつる靖国神社をこれ以上参拝しなければ、いつでも開く用意がある」と述べた。ポスト小泉政権での対日外交も、日本の首相が靖国に参拝するかどうかを基準の一つとする考えを表明した。

 胡主席は会談で「中日友好の発展は両国の利益とアジアの平和に結びつく」と関係改善の必要性を強調。「現在の中国は発展途上国で、経済的に拡大主義をとる状態ではない。他国を武力で威嚇する意思はない。中国が一層前進できるよう、力を貸してほしい」と日本の協力を要請した。

 一方で、関係が冷え込んだ原因を「日本の少数の指導者がA級戦犯をまつる靖国神社に参拝を繰り返すからだ」と述べ、名指しは避けつつも小泉首相の参拝を改めて批判。「政府の代表者が行くのは政府の意思を表していると考える。指導者個人の気持ちは分かるが、被害国の国民の気持ちも尊重してほしい」と求めた。

 これに対し橋本氏は「多くの日本人の心の中にある靖国神社は身近な人の姿ではないか」と反論した。その上で「胡主席の話は日本に対する一つのメッセージと受け止める。率直なご意見に感謝する」と述べた。

 今回の訪問は民間交流を重視する中国側の招きによるもので、日中友好7団体の代表が同時に訪中するのは初めて。中国政府は当初、厳しさを増した日本国内の対中感情を和らげるため、今回の会談では胡主席靖国参拝A級戦犯には直接言及しない方向で検討。発言の原案には盛られていなかった。

 だが、小泉首相が27日の記者会見で「中国、韓国の政府による批判も、私の参拝を理由に首脳会談を行わないことも理解できない」と改めて強調したことなどから、従来と同様、靖国問題を直接批判する方針に転換。当初予定していた記録に残る「重要講話」でなく、胡主席が口頭で示す形になった。


わざわざ日中友好7団体の御代表様たちを一堂に呼び寄せて、どのような「重要講話」が胡錦涛国家主席の口から飛び出すのか、とても期待していたのですが、結果は・・・。(はぁ〜溜息)
7団体の御代表様たち、ご苦労様でございました。

小泉首相が27日の記者会見で改めて強調したことって、これまた今まで言ってたことを繰り返しただけなんだから、それを理由に「重要講話」を取り止めたなんていうのはおかしいでしょう。

普通に考えれば、胡主席が「重要講話」を発表できなかったのは、別の理由によるものである可能性が高いのではないでしょうか。

考えられるのは、中国内の強硬派から横やりが入ったとか、直前に発生した日本の教科書検定の問題や、在上海日本総領事館員の遺書リークなどが影響したとか、でしょう。

私は、今回の「重要講話」で、中共政府は靖国問題で譲歩する代わりに、日中間に横たわる諸問題を有利に進めるとともに、次期自民党総裁選挙で親中派議員の後押しを図るものだとばかり思っていました。
それは、私の希望的観測というよりむしろ、中国側がそういう戦略で来たら怖いな、というものだったのですが。(実際、中国内では歴史問題を棚上げして日中関係を前進させようとする考えが発表されたりしていましたから。『「歴史を基礎にするな」中国政府系元所長が対日転換論』

いずれにしても、「重要講話」は行われず、中共政府は自ら切った歴史カードの呪縛から抜け出すことができませんでした。
西側諸国からの中国バッシングが強まる中、天安門事件のあと、西側諸国の先頭を切って中国に扉を開いた実績のある日本とは、関係を改善しておくことが中国にとっては非情に重要であると思うのですが、今回のチャンスを自ら棒に振った中共政府は、ますます苦境に立たされた(というか、立った)のではないでしょうか。