フランスの理想と現実のはざまで・・・

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20051107-00000014-mai-int&kz=int
以下引用

パリ郊外で先月末に発生した北アフリカ系移民の若者らによる暴動はフランス各地に飛び火、一層、深刻さを増している。事件は、移民若年層の一部にうっ積する不満と敵意の激烈さを見せつける一方、「自由、平等、博愛」の理念を掲げながら移民同化と差別撤廃に苦慮する仏社会の矛盾をも浮き彫りにしつつある。【パリ福井聡】
 暴動がこれほどまでに拡大した背景には、治安維持を優先するサルコジ内相の強硬路線に対する反発だけでなく、就職、家探しなど日々の暮らしの中で移民が直面する差別への怒りがある。さらに、仏社会に溶け込めない一部移民は大都市郊外などで一種の「ゲットー」を形成しており、社会からの疎外感が若者の過激化を招いている。
 今回、暴徒化した若者の多くは、高度成長期のフランスに北アフリカなどから両親が移り住んだ移民の2世、3世だ。フランスがアフリカに植民地を持っていたこともあって、仏政府も、仏語を話し「言葉の壁」のない移民を積極的に受け入れた。パリ、リヨンなどの主要都市の郊外に低家賃の団地を建設し、移民に安価な住宅を確保した。
 フランスには自国社会に溶け込む意思のある移民は受け入れる気風があり、仏に生まれ育てば国籍取得の権利が生まれる。その結果、現在、フランスは人口約6000万人のうち、イスラム系だけで約500万人の移民を数える「移民大国」となった。だが、イスラム教徒の女子児童・生徒に公立学校でへジャブ(イスラムのスカーフ)着用を禁じるなど、フランスには移民に対して自国社会モデルの受忍を迫る側面がある。
 しかし、生計のためにフランスを自主的に選んだ移民1世と違って、移民2世、3世の若者は「生まれ故郷」であるはずのフランスで差別を味わっている。移民が暮らす郊外の団地での失業率は仏全体(約10%)の2倍以上とされ、1人当たりの年収は1万500ユーロ(約147万円)で仏平均よりも40%低い。
 「昼はゲーム機で遊び、夕方になったら集合する。火炎瓶を手に機動隊との対決に出かけるんだ」。暴動に参加した若者はそう語る。暴動は先月27日、パリ北郊で、警察の職務質問を受けて変電所に逃げ込んだ移民系少年2人が感電死した事件がきっかけ。日常生活に不満を募らせている移民の若者の間では、自らの不満のはけ口として暴動に加わりやすい環境が生まれている。(毎日新聞) - 11月8日4時24分更新
引用終わり
北アフリカ系移民の少年2人が死亡したのをきっかけに、フランス各地で続く暴動は、発生から11目になっても依然として収まる気配はなく、逆に周辺諸国に波及する気配さえあります。
与党・国民運動連合(UMP)党首のサルコジ内相が「ごろつきを片づける」などと発言したのも、火に油を注いだかたちになっています。
これまで、フランスは旧植民地からの移民を、フランスの国家理念に合意する人は市民になれるという理念のもと、積極的に受け入れてきました。
今回の暴動は、上の毎日新聞の記事にあるように、そうした移民たちに対する「差別」や「貧困」が背景にあるとの分析が多くなされています。
たしかに、そうした「差別」や「貧困」という社会問題は存在しているのでしょう。
しかし、一方でEU統合や移民の増加による失業問題は一般のフランス人にとっても深刻な問題であり、逆に社会保障制度の点では費用負担が重くのしかかって来ているともいえるでしょう。
さらに、今回の暴動もそうですが、社会に対する不満が放火などの暴力へ直結してしまうということ自体がしめすように、移民の流入は少なからずフランス国民に安全に対する不安を抱かせています。
今回の暴動はイスラム系の移民が中心だという報道もありますが、イスラム教とキリスト教との対立という構図も描けるのかもしれません。
ただ、今回の暴動の背景を色々と分析して問題点を指摘すること自体は意味のあることだとおもいますが、一番忘れてはならないことは放火や略奪、暴行などの暴力行為は許されるべきものではないということと、そのような暴力では決して問題は解決しないばかりか、問題をさらに深刻かつ複雑にするということです。
そういう観点から、上に引用した毎日新聞の記事は、集団テロ行為と変わらないような暴動に対し、ほとんど非難するような論評はなく、逆に移民を受け入れる側にばかり問題があるかのような書き方をしていることは、私は少しおかしいのではないかと思いました。