日本の安保理常任理事国入りについて

『4常任理合計より高負担、許されるか…日本が改正要求』
以下引用

【ニューヨーク=白川義和】小沢俊朗・国連3席大使は17日、国連総会第5委員会(行政・予算)で演説し、国連分担金の算定方式について、「安全保障理事会の5常任理事国の4か国(英仏中露)を足しても、その地位を拒否された一加盟国より財政負担が少ない。こうした現状を続けることが許されるのか」と述べ、来年の分担金比率の見直しで改正を求める考えを示した。国連の場で、日本が常任理事国入りと分担金問題を結びつけて発言したのは初めて。
 国連予算の分担率は原則、国民総生産をもとに3年ごとに決定される。2004〜06年の日本の分担率は19・468%(今年は3億4640万ドル)で、米国の22%に次いで多い。米国以外の4常任理事国の合計は、15・31%にすぎない。
 小沢大使は、分担金の算定方式が公正ではないとの「失望感や不満」が日本で増えていると主張。「特別な地位を持つ加盟国が、特別の責任を負うことを反映した制度」を求めていくとし、常任理事国が相応の負担をすべきだとの考えを示した。(読売新聞) - 10月18日13時50分
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「日本が{{常任理事国入り}}と分担金問題を結びつけて発言」というのは、どうなんでしょう?
いかにもカネで面を張るような嫌らしい態度に思えるのですが。
小沢国連大使が「分担金の算定方式が公正ではないとの「失望感や不満」が日本で増えていると主張」したのは、日本政府の勝手な方便なのか、それとも日本国民の民意を客観的に判断したものであるかは分かりませんが、「特別な地位を持つ加盟国が、特別の責任を負うことを反映した制度」という言葉の中の、「特別な地位」が常任理事国を指し、「特別の責任を負う」が相応の分担金ということであれば、「常任理事国になることは特別な地位(特権)を得られることだ」と日本政府が考えているように受け取られるのではないでしょうか?
確かに今の常任理事国たちは自国の利益最優先で行動しているように見えるのも事実ですが、私はむしろ、常任理事国は国際社会に対して重い責任を負う役割であり、常任理事国であること自体がすでに特別な責任を負っている(分担金以外の国際貢献で)と考えるべきだと思います。
また、そういう姿勢で常任理事国入りに臨まなければ、多くの国からの支持は得られないと思います。
さらに、拒否権にしても自国の国益のみを考えて振り回すのではなく、人類全体の利益を考慮して行使するのでなければ、新たに多くの国が一国に対して拒否権を与えるとは考えにくいのではないでしょうか。

ただ、現在の国連が第二次世界大戦戦勝国を中心に運営されていて、国連に旧敵国条項が依然として残っていることを考えると、戦後60年が経った今日、戦後体制から脱却した新しい国際秩序を確立していくべきで、平和憲法を持ち戦後一貫して(主に経済的にですが)国際貢献に地道に取り組んできた日本は、新しい国際秩序を構築していく上で重要な役割を果たすべきだとも思います。

そして、だからこそ、常任理事国入りと分担金問題を結びつけずに、適正な基準による分担金負担は日本一国の問題ではなく、国連改革の一環として堂々と提起していくべきだと思いました。

ところで、日本政府は常任理事国になってどういうことをしたいのでしょうか?
多くの分担金を負担しているからそれに見合った地位に着くべきだと考えるのは勝手ですが、ただ「常任理事国になりたい!」と言うだけでは、国際社会からの支持を得る前に、日本国民からの承認も得られないのではないでしょうか。
憲法改正にしてもそうですし、{{国連}}の常任理事国入りの問題にしてもそうですが、政府と与党自民党は、国民に対してその目的と必要性をもっと説明すべきだと思いますし、それに対して、国民は日本という国をどういう国にするのか?国際社会でどういう責任を担っていくのか?について考える必要があるのでしょう。

ただ、最近日本では、権利ばかりを主張し、できれば義務は逃れたいと思う人が増えて来ているように思えますし、日本にとって大切な事柄であっても、考えるのを他人任せにしたり、他人の考えを批判するばかりで、主体的に考え責任を担って行こうと考える人が減っているように思えます。
そういう風潮からすれば、「常任理事国になる権利がある」と考えたり、「常任理事国になれないのであれば分担金は減らすべき」となったりするのは自然かなぁとも思いますし、政府が国民に充分な説明をしないのも頷けるような気がします。(まあ、そういう風潮は私が感じているだけのものかもしれませんが)

いずれにしても、日本が安保理常任理事国入りを目指すのであれば、国際社会の平和と繁栄に積極的に貢献するとの強い信念を持つとともに、常任理事国としての重い職責を充分理解したうえで、その職責を担っていく決意を表明すべきだと思いますし、そういう意味では、今回の国連大使の発言は常任理事国入りへの道のりを更に遠くした発言ではないかと思いました。