WBCに見る日本の「恥」と韓国の「恨(ハン)」

下の記事「心配は無用だった」で取り上げた、イチロー選手のコメント。

「勝つべきチームが勝たなくてはいけない。そのチームは当然、僕らだと思っていた。きょう負けることは、日本のプロ野球大きな汚点を残すことと同じ」
『勝つべきチームは僕ら イチロー=訂正』(スポーツナビ)より引用)

イチロー選手は過去2度の韓国戦での敗戦の後、「野球人生最大の屈辱」という言葉を口にしました。
そして、3度目の敗戦を喫することは、「日本のプロ野球に大きな汚点を残すことと同じ」と言いました。
その発言は、彼の中にある「誇り」がそうさせるものなんだろうと思います。
さらに、この発言から注目すべき点は、「日本のプロ野球大きな汚点を残す」としている点です。
彼は、すでに米国大リーグで輝かしい実績を残した、堂々たるメジャーリーガーです。
日本の多くの国民も、彼をメジャーリーガーとして認識しているでしょう。
そして、「彼はメジャーに憧れ、日本のプロ野球を捨てて出て行った」と考える人もいるでしょう。
しかし、彼は「日本のプロ野球に大きな汚点を残すことと同じ」と語りました。
単に言葉のあやなのかもしれませんが、私は、彼が今も日本のプロ野球を誇りに思い、日本のプロ野球のために全力を尽くしているのだと、うれしく思いました。
そして、彼のメジャーリーグでの奮闘は、決して彼個人のためのものだけでなく、日本プロ野球の名誉を懸けたものでもあったんだなと、改めて思いました。
「屈辱」や「恥」、「名誉」や「誇り」などと口にすれば、なにか傲慢なものを感じられるかもしれませんが、誇るべきものを何も持たない(持てない)よりは、良いことだと思いますし、国を代表して戦う者には、持っていてもらいたいものだと思います。
また、イチローは、敗戦の後には「(自分の)野球人生最大の屈辱」と言い、勝利の後には「きょう負けることは、日本のプロ野球に大きな汚点を残すことと同じ」と言いましたが、これがもし逆であったら、どうだったでしょうか?
2度の敗戦の後、彼は自分の野球人生において「屈辱」と言うことで、それを自分の「恥」としましたが、心の中ではそれ以上に大きな責任を感じていたのでしょう。
そして、勝って始めて、その背負っていたものについて言及できたのではないでしょうか。

一方、準決勝で敗れた韓国について、「スポーツ朝鮮」の記事を引用させてもらいます。

『【WBCコラム】世にも珍しい試合方式で消えた優勝』

三球三振させられなかったせいで、すごすごと帰り支度をしなければならないのか。2ストライク1ボールならまだ投手が優位だ。それなのにサヨナラホームランを打たれたかのような気分なのが悔しい。
 哀惜の念に耐えられない。いや、張り裂けんばかりの憤りさえ感じる。6試合勝って、たった一度負けただけなのに。口惜しさを胸にしまい、WBC韓国代表チームが見せてくれたこれまでの苦労に拍手を送りたい。
 アメリカが主導した今回のWBC。世にも珍しい試合方式のせいで韓国は最大の犠牲者となった。韓国は1次リーグ(アジアラウンド)で日本に3−2で勝った。ベスト8に入った2次リーグでもう一度戦って2−1で勝利した。韓国の2次リーグ成績は3勝。1組の1位として準決勝に進出。一方、日本は1勝2敗で脱落が予想されたが、2次リーグ最終日に米国がメキシコに敗れる波乱があり最小失点の原則によって漁利の利で準決勝に上がった。
 ほとんどすべての国際大会では組を2つに分けて進行し、ベスト4が決まったらクロストーナメントで決勝に進む2チームを決める。しかし大会初めての年に無理に欲を出した米国は、同じ組のチーム同士を再び準決勝で戦わせる日程を採択した。2組の最強チーム、ドミニカ共和国に決勝戦まで会わなくて済むように、という意図以外に説明のしようがない。
 その結果、韓国は準決勝で日本とまた戦うことになった。1つの大会で同じチームと三度も戦うという、失笑するしかないようなことになった。すでに二度勝った韓国だ。もう一度勝ってあたりまえ、負ければ脱落という滑稽なプレッシャーを抱えて三度目の対日本戦を行った代表チーム。
 日本は韓国よりプロ野球の歴史が50年も長い。高校だけで約4700チームもある日本と、50前後しかない韓国では、基本的な資源からして相手にならない。だから客観的な戦力に優れた日本に二度連続で勝ったことさえも奇跡のような出来事だった
 奇跡は三度はやって来なかった。2次リーグ以後2勝2敗の日本が決勝でキューバと試合をすることになった。欲をかいた米国はベスト4にも上がれずに恥をかき、大会最大の波乱を巻き起こして興行を引っ張った韓国は悔しいことに帰り仕度をする羽目になった。WBCの制度的な矛盾が韓国野球100年史の快挙の足を引っ張ったことになる。それでも幸いなことは、韓国野球の隠れた底力は今や全世界から認められたのだ。
キム・ナムヒョン特派員
『スポーツ朝鮮』

キム・ナムヒョン特派員の怒りの矛先は、米国に向かっているようですね。(笑)
そして、NHKのテレビニュースで何度か流れた、韓国人女性のインタビューでは、「恨みはワールドカップで晴らします」みたいなものでした。
このインタビューを聞いたときに思ったのは、「恨み」とは韓国人独特の「恨(ハン)」という感情なのでは?というものでした。
それについては、id:uumin3さんが、『「恨(ハン)」とルサンチマンは違う』で取り上げていらっしゃいます。
以下に一部引用させてもらいますと、

 だから恨〈ハン〉は、私の中では「逆境バネ」とか「ハングリー精神」とかいうものと解釈しています。

 その意味で、最初に挙げたNHKのインタビューのテロップは誤訳なのではないかと思ったのですが…

(※確かに日本的心性今の日本の野球ファン、サッカーファンからすると、野球の恨をサッカーで解くというのはややお門違いにも思えますけど 笑)

「恨(ハン)」という感情は、日本人には分かりにくいものですが、「恨(ハン)」を抱くことで、逆境を跳ね返す力がでるのでしょう。
そういう意味では、決してネガティブに捉えるべきではないものかもしれません。

ただ、「恨(ハン)」はその対象となる相手を必要とするのかも?とも思います。(この点想像ですが)
だから、「野球の恨をサッカーで」となるのかと。
もしくは、「ショート・トラックの恨をサッカーで」と。
「克己」ではなく、克服すべき対象は「他者」なのでしょうか。

「恥」は日本人を読み解くキーワードであるなんてことは、今さらなんでしょうけれど、「恨」が韓国人を理解する上で重要なキーワードになる、なんてことも今さらですね。(笑)

いずれにしても、日本人と韓国人、お隣同士でありながら、かなり違うようです。(こんなまとめで良いの?ばく)

トラックバック
http://d.hatena.ne.jp/uumin3/20060320#p1
http://d.hatena.ne.jp/kibashiri/20060317/1142563601
http://d.hatena.ne.jp/kibashiri/20060320/1142839360