民主主義に背を向けるアジア

『アジアの会議 日本は共存の道を探れ』(朝日新聞11月15日付社説)

以下引用

年の瀬に向けて、東アジアは外交の季節を迎える。
 16日の京都での日米首脳会談に続き、18日から釜山でアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議が開かれる。12月中旬には、香港で世界貿易機関WTO)閣僚会議、クアラルンプールでは東アジアサミットが予定されている。
 日本、米国、中国などは、この大舞台でどんな役回りを演じるのか。それぞれのアジア戦略が問われる。小泉首相も、最大の弱点とされるアジア外交で盛り返したいところだろう。
 「21世紀はアジアの世紀」といわれる。アジアの05年の国内総生産(GDP)は、日本を除いても世界全体の11%を占める見通しだ。日本と肩を並べた。米国の28%やEU(欧州連合)の30%には及ばないが、中国やインドなどを推進エンジンにして、さらにシェアを高めるだろう。
 その勢いに乗ろうと、これまでにない意気込みでアジアを歴訪するのがブッシュ米大統領だ。
 米政府は、米国を外した東アジア共同体や東アジアサミットの動きに不快感を隠さない。それだけにAPECではアジアとのつながりを深める米国を印象づけようと努めるだろう。貿易や投資の自由化を進め、地域の発展を促す原動力は米国をおいて他にない、という理屈だ。
 米国内には、対米貿易で黒字を積み上げ、一方で軍事力の増強に走る中国への不満が根強い。ブッシュ氏には、APECやその後の訪中で人民元の引き上げや知的財産権の保護で譲歩を引き出し、人気回復につなげる狙いもある。
 中国の胡錦涛主席は、いま訪欧を続けている。EUと中国との「蜜月」を内外に印象づけたうえで釜山に入る。先月末には、北朝鮮を訪れ、金正日総書記らと会談した。経済でも政治でも、中国の存在感を見せつけている。APECの先に控える東アジアサミットでは、米国不在のなかでアジアのリーダーとしての力量を示したいところだろう。
 それぞれの思惑で進む「アジアゲーム」のなかで、影の薄いのが日本だ。農産物貿易や靖国問題でアジアの国々との溝を深め、外交の主導権を握るどころではない。日本こそ地域発展のかなめという積極的なメッセージを小泉首相が出すには、どうすればよいのか。
 コメを含むいっそうの市場開放。環境などでの経済技術協力。鳥インフルエンザなどに対する医療支援。貧困層を含めた生活の底上げに日本が手を差し伸べることを確約することだ。
 同時に、政治的にも文化的にも自由な日本の価値や実像を、もっと伝えるべきだろう。こうしたことで、「歴史問題」のくびきを軽くすることができれば、外交に説得力が増すだろう。
 アジアを舞台にした日米中の「三国志」を地域全体の共存のゲームにする。そのカギは、「開かれた地域主義」というAPECの理念である。
引用終わり

朝日新聞は、相変わらず「日本はアジアで孤立している」いう主張を繰り返していますね。
さらに、日本はもっとアジアの国々に「手を差し伸べることを確約する」べきだとも言っています。
しかし、同時に「政治的にも文化的にも自由な日本の価値や実像をもっと伝える」ことによって、日本のアジア外交に説得力が増すのでは?とも言っています。
ただ、それを言うなら、朝日新聞こそが、「日本の実像」をもっと正確に報道してもらいたいものだと思ったりしますが。(苦笑)
アジアは経済的にこそ発展を遂げて来ていますが、こと民主化という点では、まだまだ遅れているというしかないのが現状でしょう。


『アジア民主化、二極化へ…言論の自由・清廉度分析』(中央日報)
以下引用

民主化に向けたアジアの歩みが非常にのろい。よくなっているとはいうが、よくみると憂慮する点が1つや2つではない。またアジアの国々の民主化の水準には二極化現象も起こっている。
フリーダムハウス、国際透明性機関、国境のない記者団がそれぞれ毎年発表する世界民主化指数、清廉度、言論の自由度などを分析した結果だ。
◇二極化する民主化=フリーダムハウスによると2004年23カ国のうち▽日本、モンゴルなど8カ国が 「自由」▽マレーシアなど6カ国が「部分的自由」▽北朝鮮など9カ国が「非自由」に分類された。
2000年と2004年を比べると8カ国の民主化指数が高くなった。悪くなったのはバングラデシュ、ネパールなど2カ国だった。しかし非自由国家の場合、権力が共産党北朝鮮、中国、ベトナム)、軍部(ミャンマーパキスタン)、国王(ブータン)などに集中していることが明らかになった。これはこれらの国では近いうちに事情がよくなる可能性が低いという点を示唆したものだ。
また国際透明性機関が最近発表した「各国腐敗指数(CPI)」によると調査対象19カ国のうち10カ国の清廉度が昨年よりよくなった。スリランカなど4カ国は悪くなった。問題は清廉ではないアジア国家の腐敗水準が深刻だという点だ。10点満点のうち7点以上はシンガポールと日本だけだった。バングラデシュなど14カ国は5点未満で非常に悪い水準だった。
言論の自由度も二極化現象を見せた。国境のない記者団によると台湾など12カ国の言論の自由度が昨年より改善した。フィリピンなど6カ国は悪くなった。国境のない記者団は「インドの女性報道家の活動が活発になるなど、アジアの言論の未来に希望がある」と発表した。しかしパキスタンなど8カ国の言論の自由度は調査対象168カ国のうち最下位圏(150位以下)だった。
またタクシンタイ首相やアロヨフィリピン大統領とともにマスコミに否定的なリーダーたちも少なくない。彼らは政府を批判した記者やマスコミ関連社を相手に損害賠償請求訴訟をよく起こしている。
アジアの民主化(資料:米国フリーダムハウス)
▼自由
韓国、日本、インド、タイ、モンゴル、フィリピン、台湾
▼部分自由
ネパール、バングラデシュ、マレーシア、スリランカシンガポールインドネシア
非自由
アフガニスタン北朝鮮ミャンマーラオス、中国、カンボジアブータンパキスタンベトナム

オ・デヨン記者
2005.11.14 13:06:18

引用終わり

東アジア共同体は、中国主導で進められる懸念が高いのですが、経済的な結びつきだけを強めて、地域の民主化がなおざりにされるか、もしくは後退してしまうようでは、アジア地域の未来は「暗い」というしかないでしょう。
中国は、アフリカ大陸でも、エネルギー資源の提供と引き換えに、スーダンなどの独裁国家に武器などの援助を行っています。
日本は、中国や南北朝鮮(特定アジア3カ国)との関係が靖国参拝問題を含む「歴史認識問題」で悪化していることから、「アジアで孤立」しているとよく言われますが、日本が特定アジア3カ国の中に入ったときに孤立してしまう所以は、その民主化度が際立っているからとは、言えないでしょうか。
たしかに、韓国は上の記事でも民主化水準が「自由」とはなっていますが、政府による違法な盗聴が問題になるなど、欧米諸国や日本に比べればまだまだ民主化が進んでいるとは言えないばかりか、ノムヒョン政権になってからは、韓国の民主主義は後退しているようにさえ思えます。
日本は常に過去の「罪」ばかりを強調され、現在の姿を顧みられることは少ないですが、現在の姿だけを冷静に見れば、非難されるべきは日本ではないと思いますし、「日本が孤立している」ことだけをもって、日本が間違っているとするのは、やや軽率であるとも思います。
最近、中国は積極的に他の独裁国家に支援の手を差し伸べ、日本の安保理常任理事国入り問題のときにも明らかになったように、国連を含めた国際舞台で数の力を背景にした発言力を増して来ています。
今後日本は、中国に対抗するためにも、「自由」と「民主」という価値観を持つ国々との連携を一層深め、アジア地域の民主化推進に力を注ぐべきだと思います。
そして、そのためにも、現在の親米路線は評価できるものだと思いますし、中国が経済の自由化だけでなく、民主化にも前向きに取り組む姿勢が見られないかぎりは、日本は中国と一定の距離をおいた関係であることはやむをえないとも思います。